旅先で不測の事態に遭遇!いざという時の対処法は?

 何年か前になりますが、僕は6週間ほど南米をほっつき歩いていたことがあります。ざっくり言えば、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ペルーと大陸を時計回りに訪れていった感じです。

 やはり日本の常識が全く通用しないなんてことは日常茶飯事。今回はそんな中でも、ボリビアでバスが故障して動かなくなり、運転手も失踪、最終的にヒッチハイクをして助かったというエピソードを通し、旅先で不測の事態に遭遇した際の対処法をご紹介します。

 バスが故障した経緯から書いている関係上、エピソードが少し長くなっておりますので、お時間の無い方は最後の「まとめ」だけでもご覧いただければ幸いです。

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凄まじい悪路で眠れず

 南米周遊での移動には、ほとんど全行程でバスを利用しました。基本的には深夜バスに乗り込んで仮眠を取りつつ移動し、日中目的地に着いて観光。その日の夜にまた深夜バスに乗って眠りながら次の街へ。この繰り返しです。

 ただ、当然ながら計画通りには行かないことも多々あります。

 パラグアイの首都アスンシオンからボリビア第2の都市サンタクルスまでバスで移動した時のことでした。走行距離1250km、チケットには「20:00発、15:30着」と書いてありましたので、19時間半の行程です。

 アスンシオンを定刻通り20:00に出発したバスは、当初順調に走行。前日、バスターミナルの長椅子で仮眠を取っただけの僕は、疲れもあってか爆睡していました。ところが、夜が明けた頃からバスが大きく揺れ始め、とても眠るどころではなくなってしまいます。

 窓から外を見ると、舗装の欠片も無い凄まじい悪路。しかも最近雨が降ったのか、所々に水たまりが散在し、バスはぬかるんだ泥道で頻繁にタイヤを取られていました。

 たまに池と見間違えるくらい大きな水たまりが広がっていたのですが、バスは何の躊躇も無く果敢に突っ込んでいきます。運転手のおっちゃんはこのバスが水陸両用車とでも勘違いしているかのようでした。僕の前の乗客が窓を開けていたため、跳ねた大量の泥水がこっちにまで飛んできてびしょ濡れになる始末です。

バス、発煙して立ち往生

 それでも、翌朝11:00には無事に国境を越え、バスはボリビアの大地を突っ切って行きました。ようやく舗装された道路に出たため、もう大丈夫かと安心していましたが、今度はバスが定期的に発煙しては止まるようになってしまいました。やはり、車体が沈み込むほどの「池」に飛び込むべきではなかった…。

 17:00頃、ついに最大級の発煙があり、煙が車内にまで流れ込んできました。異臭がして、乗客は全員速やかにバスから降りるようにとの指示が飛びます。「よもやバス、ガス爆発か!」と、僕も貴重品の入ったリュックだけ引っ掴み、即刻バスから降りて遠くまで全力疾走。運転席の近くを通った時、辺りが異常なまでの熱気に包まれているのを感じました。

 幸いにも爆発はしませんでしたが、こうして僕らのバスは、全く動かなくなってしまいました。こちらの国ではバスの運転手が修理工も兼ねているようで、彼が様々な工具を取り出し、バスの下に潜り込んでガチャガチャやっています。「熱っ!」などと悪態をつきながら懸命に直そうとしましたが、どうやら破損したパーツ(ゴム製のチューブみたいなもの)を新たに取り寄せないことには、どうしようもないらしい。

運転手失踪

「これは、もはや詰んだのでは…」と思っていると、運転手のおっちゃんはおもむろに対向車線の真ん中に立ち塞がりました。そして、10分に1回くらいの頻度で車がやって来るたび、大きく両手を振りながら、これを止め始めたのです。

 一度など、トラックが彼を轢きかねないほどの速度でそのまま道路を突っ走って行きました。走り去る鉄の塊に向かって大声で叫ぶ運転手のおっちゃん。スペイン語なので分かりませんが、多分ものすごい勢いで悪態をついていたのでしょう。

 こうして2~3台の車を見送った後、奇跡的に僕らが乗っていたのと同じ会社のバスが向こうからやって来ました。流石に停まってくれたそのバスの運転手に、おっちゃんは事情を説明しましたが、残念ながら相手も必要な部品を持っていなかったようです。そして、それが分かるや、彼はそのまま同僚の運転するバスに乗り込み、1人去っていってしまいました。

 おそらく、一番近い町まで乗せてもらい、そこで部品を調達して戻って来るつもりだったのでしょう。しかし僕の記憶では、前に町らしきところを通ったのは、もう2時間以上も前のことでした。仮に彼があの町で部品を手に入れ、戻って来て修理するとしても、単純計算あと4~5時間はかかります。

 片や、運転手不在のまま放り出された僕ら乗客が立ち往生しているのは、ボリビアの原野を突っ切って走る大きな一本道のど真ん中です。周囲を見渡しても、あるのは一面の野原のみ。家一つありません。

 時刻ももはや18:00近く、日は既に大きく西に傾いています。そもそも運転手が戻って来るかすら確証がありませんし、仮にバスが修理されるとしても、街灯一つ無い真っ暗な原野のど真ん中で4~5時間も待つなんて怖すぎます。。

異郷の地でヒッチハイクに挑む

 この状況下で、他のお客はどうしていたのか。地元の人間は、こうした事態に慣れていると見え、当然かのようにヒッチハイクをして、次々と去っていきました。このままでは、本当に1人だけ取り残されてしまう…!

 焦った僕は、仲間を得ようと道路の脇に座り込んでいた1人の若いバックパッカーに声をかけました。片言の英語で話してみると、彼はアルメニアから来た旅行者で、英語の他、スペイン語も少し話せると言います。

 更に、彼と一緒に声をかけた2人組のバックパッカーが、スペイン人であることが判明。当然彼らは、公用語がスペイン語のボリビア人と何不自由なく話せますから、この4人でヒッチハイクをすることになりました。

 しばらく待っていると、40代くらいの男性が乗る黒いミニバンが停車。スペイン人たちが交渉し、僕とアルメニア人も一緒に乗せてもらえることになりました。乗せてくれた男性は妻と子の家族連れであったため、それだけで安心感がありました。

 車は、先ほどまでのバスとは打って変わって、飛ぶように闇夜を切り裂いていきました。しかし、幾度となく平地と峠が繰り返されます。「次の山道を越えれば…!」と期待しては、なかなか目的地に着かず、町の明かりが見えるたびに裏切られ、2時間、3時間と過ぎていきました。

 睡魔に襲われていましたが、極度の不安から眠ることもできず、あと少しで限界に達しようかという時、僕らはいきなり整然と区画された街に突入しました。ボリビア第2の都市、サンタクルスです。

 ヒッチハイクに快く応じてくれた恩人から要求されたのは、米ドルでたったの10ドル。これを支払い、念願のバスターミナルに降り立った時には、22:00を回っていました。

 前述の通り、パラグアイの首都アスンシオンを発ったのが前日20:00。元々サンタクルスへの到着予定時刻は15:30であったにも関わらず、立ち往生した時点で既に17:00。ヒッチハイクに成功したのが18:30です。そして、実際のサンタクルス到着時刻が22:00過ぎですから、締めて26時間強の長旅でした。

まとめ

 今回は、南米を1人で旅行中にバスが故障してしまうという稀有なトラブルを参考材料にしましたが、場所や状況に限らず、不測の事態への対処法は本質的には同じです。

 まず、1人旅であろうが複数人での旅であろうが、身内で目の前の問題を解決できないのであれば、現地人を含め解決策を提出できる他の人を頼るしかありません。事態の深刻度によっては、日本の大使館や総領事館といった在外公館に助けを求めることも有効な手段にはなりますが、今回のようにそれが難しいケースも多々あります。

 その場で状況を打開せねばならない時には、このまま対策を講じなかった場合に想定されるメリット・デメリットと、一歩踏み出して何か行動した場合のメリット・デメリットを天秤にかけ、出来る限りメリットが多い方を取ることが重要になります。

 したがって、旅先で不測の事態に遭遇した場合は、次の3点を心掛けましょう。

旅先で不測の事態に遭遇したら

①自分たちで問題を解決できないと判断したら、勇気を出して誰かに声をかける。ただ動転したり、無為に悩んだりしているだけでは何も解決しない。

②海外渡航先でのトラブルの場合、特に異国から旅をしてきている人はある意味で同じ状況に置かれている運命共同体なので、力になってくれる可能性が高い。

③どうしても勇気が出ない時には、むしろこのまま何もしなかった場合に遭遇するであろう危険を予測し、行動した場合のリスクと天秤にかけることで、論理的に考えてどちらが安全かを問う。

 不測の事態など起こらないに越したことはありませんが、旅先では何が起こるか分かりません。いざという時に心の準備をしておくだけでも、冷静に対処できると思います。僕の体験が何かの参考になれば幸いです。