雑誌記者も実践!読者を引き込む文章術

想定とのギャップがインパクトを生む

 僕ら雑誌記者が記事を執筆する際には、「読みやすい」文章を書かねばならないのは当然として、その一段上の「面白い」読み物を提供することが求められます。

 何を「面白い」と感じるかは人によって異なるため難しいのですが、基本的には読者の予想を上回るような事実ないしエピソードがあると心強いでしょう。そうした想定外の事象は読み手にインパクトを与え、記事の中に引き込む際の大きな手助けとなります。

 今回は、相手にインパクトを与えやすい事実やエピソードの選び方と、そのインパクトを最大化して伝えるための方法をご紹介しましょう。一番最後に「まとめ」を書いておきましたので、お時間の無い方はそちらだけでもどうぞ。f:id:eichan99418:20190420233218j:plain

パジャマ姿で投資家に会う!?

 前述のように、想定とのギャップがインパクトを生み出し、相手を引き付けます。この際の「想定」とは「常識」とも言い換えられます。したがって、一般常識の範囲を超えたようなエピソードがあれば、必ず取り入れるべきです。

 例えば経営誌の記事で言えば、サービスの斬新さや起業家の突飛な行動を読者にうまく見せることで、興味を持ってもらうことができます。

「Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグは、パジャマ姿で投資家に会いに行った」

 これは比較的有名なエピソードですが、初めて聞いた時には多くの人が「えっ!何それ?」と思ったことでしょう。

 より私たちの生活に身近な例を出すと、下記のような感じでしょうか。

「なんとこの店では、ビールがグラス1杯50円で飲める」

 ここで「え?どこの店?どんなカラクリがあるの?」と思ってもらえれば、こちらのものです。「理由を知りたい!」と渇望されるほど、読者を引き付けている証拠ですからね。

 これらの事例は、「パジャマ姿で投資家と会う」「ビールが1杯50円」という事実が一般常識からかけ離れているため、そのギャップがインパクトを生み出し、読者に興味を抱かせるわけです。

 ちなみに後者の例では、「なんと」という言葉を入れることで、書かれている事実が常識外であることを強調していますね。まあダメ押しみたいなものです。

前提条件が常識でなければ提示せよ

 では、今度は難易度を少し上げて、本当は大変な事実なのに、その事象の常識的な相場が分からない場合を見ていきます。

 例えば、下記の文章はいかがでしょうか。

「この技術により、人工衛星を製作する費用は3億円にまで抑えられることとなった」

 確かに「にまで抑えられる」という表現で「費用が少なくなった感」を醸し出すことはできています。しかし、いかんせん人工衛星の製造費用など一般の人にとって常識ではないので、実感が湧きません。ギャップの創出としては不十分でしょう。

 ならば、どうすれば良いか。答えは簡単。事実の前に「従来はこうだった」と、これまでの状況を明確に書いてしまえば良いのです。先ほどの例文を、下記のように加筆・修正しましょう。

「従来は製作に300~500億円ものコストがかかっていた人工衛星だが、この技術によってその費用は3億円にまで抑えられることとなった」

 このように前の文節で従来の数字を明示するだけでなく、「~ものコスト」という表現で以前の費用がいかに高かったかを強調し、援護射撃です。実に100分の1以下の値段。ここまで書けば、読者にも最新技術によって費用がどれだけ安価になったか実感してもらうことができ、インパクトを与えられます。

プレゼンや営業にも応用可能

 ここまでの事項は、至極当たり前の内容と思われるかもしれません。しかし、日々僕らが目にする実際のプレスリリースの中にも、単に「弊社サービスで○○が可能となった」とだけ書かれているものは多くあります。

 これでは、その業界の人間にしか凄さが伝わりません。もし一般の人にも商品やサービスの凄さを知ってほしいと思うのであれば、専門用語を極力排除するのは当然として、元々の状況を明示し、それを自社がどのように解決したのか書くことで、読者にインパクトを与える必要があるのです。

 ちなみに、相手にインパクトを与えることで興味を持ってもらう手法は、文章に限らず、プレゼンや営業でも使えます。プレゼンであれば自身の企画、営業であれば自社商品について説明する際、注目すべきポイントを語る必要がありますよね。それが相手の予想を上回るものであれば、成功の可能性が高まるわけです。

 この時、もし相手が従来のビジネスモデルや商品との違いを容易に想像できないようであれば、差別化要因を明確に伝えることで説得力を高めることができます。数値データなど可視化できる定量的な指標があると、なお望ましいですね。

読者を引き込む文章術・まとめ

①読者の予想を上回る事実やエピソードを示し、そのギャップからインパクトを与える
②「理由を知りたい!」と思われる内容ほど読者を引き付けている
③前提となる相場が常識でなければ、それを明確に提示する
④以上の文章術は、プレゼンや営業にも応用できる

 とにかく、書いている事実やエピソードが従来の常識からかけ離れていることを、読み手にしっかり認識させられるかが勝負です。したがって、記事を面白いと感じてもらうためには、不特定多数の人と同じ「常識」を持つことが前提になると言えます。「常識」を知っているからこそ「常識」を破れるわけですね。