南米周遊記 第1章・南米到達編(2)/渡航準備

南米渡航に必要なもの

 2012年2月7日~3月12日にかけての南米旅行を描く本コーナー。前回は、卒業旅行の行先として、僕が南米を選んだきっかけについて紹介しました。今回は、南米へ渡航するにあたって必要となった諸準備の様子を描きたいと思います。

 2012年1月、僕は大学生活最後のテスト勉強とレポート執筆、そして卒業論文の考査などをこなしつつ、伊東の指導の下、南米への渡航準備を着々と進めました。

 訪れる国にもよりますが、南米渡航にはいくつか必要不可欠なものがあります。以下、一つずつ説明していきましょう。

ブラジル入国のための観光ビザ発行

 僕が南米を訪れた2012年時点では、ブラジルへの入国にはビザが必要でした。五反田駅徒歩1分。「洋服の青山」が入るビルの2階に在東京ブラジル総領事館があり、そこで書類審査の上、観光ビザを発行してもらわねばならなかったのです。
※2019年6月17日より、日本人がブラジルに入国する際、90日以内の滞在ならば観光ビザの取得が不要になりました。

 ビザの発行には「証明写真、パスポート、銀行の残高証明書」の3点が必要でした。それらを窓口に提出すると、パスポートごと回収され、7~10日の後、適当なページにブラジルビザが刻印された状態で返却されます。

 したがって、領事館には2度足を運ばねばならないのですが、1日のうち9:00~13:00の4時間しか窓口が開いていなかったため、タイミングを逃さないよう注意が必要でした。労働時間の短さには驚くばかりです。

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 僕は、1度目は伊東と共に赴きました。彼はベテランの旅行者である割に、何かと準備不足で、当日になって五反田駅に据え置かれた簡易機械で証明写真を撮っていました。むしろ、「経験者の余裕なのか」とも思いましたが、どうやらそうではなかった模様。というのも彼は、本来は白でなくてはならない証明写真の背景が少し灰色がかっていたというだけで過度に心配し、浮足立っていたからです。

 無事にビザの発行許可が下りると、伊東は安堵の表情を浮かべて「対応してくれたのが、あのお兄さんで良かった」とつぶやきました。この男は、ある事象をもたらした原因を、非科学的な要素に求める習性を持っています。この時、伊東の幸運を呼んだのは、彼に対する受付を担当した快活な青年であるということになったのでした。

 ビザの発行許可さえ下りれば、あとは約1週間後にパスポートを受け取りに行くだけです。これで、ブラジルに入国することが可能となりました。

黄熱病の予防接種を受ける

 それから、黄熱病の予防接種を打たねばなりません。予防接種を受けた証拠である「イエローカード」は、パスポートと共に、南米諸国を旅する上で常に携帯すべき必須アイテムです。

 僕自身は、現地で「イエローカード」の提示を求められたことは一度もありませんでした。しかし、発症すれば致死率20%以上という黄熱病に罹るリスクを無くすためにも、予防接種は受けておくべきでしょう。

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 黄熱病の予防接種を打つには、厚生労働省管轄の東京検疫所に電話して予約を入れる必要があります。予防接種は毎週火曜の午後しか行っておらず、時間厳守ですので、渡航に間に合うよう注意せねばなりません。

 この予防接種についても、僕は伊東と一緒に受けに行きました。新橋駅にて待ち合わせると、ゆりかもめに揺られること約20分。テレコムセンター駅を最寄りとする東京港湾合同庁舎にて、受けることができました。担当者から「ワクチンの効果は10年持続する」と聞き、頼もしさを覚えると同時に、「どれだけ強いワクチンなんだ……」と伊東と顔を見合わせたのを覚えています。

 ちなみに、南米に渡航する際には、狂犬病の予防接種も打っておいた方が良いそうです。蚊に刺されることで感染する黄熱病に比べて、罹患する可能性はかなり低いと考え、僕らは受けませんでしたが、発症すれば致死率はほぼ100%ですので、万が一のことを考えれば打った方が無難だったと思います。

 さらに余談ですが、東京港湾合同庁舎の道を挟んで向かいには、大江戸温泉物語があります。伊東はそれにはしゃぎ、建物の前まで行くと「せっかく来たんだ。写真を撮ってくれ」と言ってポーズを取りました。彼は、そうした可愛げのある男でもあるのです。

 もっとも、「ここで一風呂浴びていこう」というわけにはいきませんでした。その後には大学での授業が控えていましたし、予防接種を打って1時間もしないうちに湯に浸かるのはまずかったからです。僕はその日の夜、大学の同期との飲み会に参加したのですが、念には念を入れ、一滴たりとも酒を口にしませんでした。

国際キャッシュカードという生命線

 あとは、現地でもお金を引き出せるように、新生銀行の口座を新たに開設しました。クレジット機能は付いていない、ただのキャッシュカードですが、「PLUS」というマークの付いているATMさえあれば、世界中の至る所から現地通貨を引き出すことが可能です。

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 南米でも、よほどの僻地でない限りはこのカードに対応したATMがありました。ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ペルーと巡る中、このカードのお陰で何度救われたか分かりません。

モスクワ、マドリードを経て南米に入る

 最後に、当然ながら、南米への航空券が必要です。これについて、僕は伊東に一任しました。彼は航空会社の特性から価格まで熟知しており、そうした事項に関するノウハウを持っていたためです。

 僕たちは当初の考え通り、低価格を重視する方針の下、「成田→モスクワ→マドリード→サンパウロ」という経路でブラジルに入国することとなりました。日本出国は2012年2月7日に決定。ついに、冒険が始まります。

次回へつづく)

※「南米周遊記」は、2012年2月7日~3月12日にかけての南米旅行を題材とした記事です。