ミシシッピニオイガメの飼育方法は?初心者が注意すべき6つのこと

基本的に初心者でも育てやすいが…

 初心者でも簡単に飼育できることから、人気の高いペットと言えるミシシッピニオイガメ。忙しい方や一人暮らしの方でも飼えるため、ペットに癒されたい方にオススメです(詳細は下記の記事参照)。 ただ、確かにミシシッピニオイガメは、水槽、浮島、ヒーター、フィルター、水温計といった必要な設備が揃っていれば、基本的にすくすくと育ってくれますが、気を付けなければならない事項もいくつかあります。今回はそうした注意点について、優先順位の高い(=命や健康に関わる)方からご紹介していきます。

①水温を25℃程度に保つ

 ミシシッピニオイガメの適温は23~30℃です。水槽内の温度を25℃程度に保ってあげると、快適に過ごしてもらえます。

 カメは爬虫類に属する変温動物。私たち哺乳類のように自力で体温を調節できず、体外の気温や水温から大きな影響を受けるため、極端な寒さや暑さは命取りになります。200円程度の安価なもので構いませんので、水温計は必ず設置して、適宜水温を見るようにしましょう。

 人の表面温度は指の先でも32~33℃あるので、水温が多少高くても、僕らからすれば冷たく感じられます。しかし、カメにとっては熱い場合もあるため、水温は感覚ではなく数値で確かめてください

 冬場は、暖房を入れなければ室温が10℃近くになることもあります。当然、水温もそれに応じて下がりますので、何も対策をとらねばカメは凍えてしまいます。

 そこで活躍するのが、水槽用のヒーター。これさえ水中に設置しておけば、自動で水温を24~25℃に保ってくれるので安心です。基本的にこの手のヒーターにはカバーがついているため、カメが火傷してしまう心配もありません。

 反対に夏場は、水温が上がり過ぎないよう注意せねばなりません。急激に水温が上がると、カメも熱中症になってしまいます。

 対策として最も簡単かつ効果的なのが、水槽を置いてある部屋の冷房を常につけておくことです。部屋の温度を下げれば水温も低く保てますので、カメがのぼせてしまうことはないでしょう。

 そもそも夏は、冷房をつけなければ人間も熱中症になる危険があります。最近はコロナ禍の影響でテレワークも増えていますので、普段僕らが涼しく過ごしている部屋に水槽を置いておけば大丈夫です。

 その際には、水槽を日陰に移したり、水槽にすだれのようなものをかけたりして、直射日光が当たらないようにしましょう。後述するように、カメは日光浴をする必要のある生き物ですが、体温が上がり過ぎて熱中症になるようでは本末転倒です。

 仕事やレジャーで日中に家を空ける際、電気代節約や地球環境保護の観点から冷房をつけたままにしたくないという方には、水槽用の冷却ファンがオススメ。水温を下げてくれるので、室内の温度に関わらず、水槽内を快適な環境にすることが可能です。

②最低でも週1で水替えを行う

 カメを飼育するにあたって、最も大切であり、唯一大変な作業と言えるのが「水替え」です。しかし、これを怠ると、食べ残しや排泄物によって水槽内の衛生環境が悪化し、酷い場合はカメが病気になってしまいます。

 水槽内の水質を維持するためのフィルターを稼働させた上で、最低でも1週間に1度は水替えを行うようにしましょう。フィルターが正常に機能していて、カメの腸内環境を整える効果のある人工飼料を与えていると、4~5日程度では水が濁っているように見えない場合もあります。ただ、人の目で見て綺麗そうでも、カメにとっては水が汚くなっているケースも多いので注意が必要です。

 カメにとって水が汚れているかどうかを判断する上で注視すべきは、ずばりフンです。フンに白い綿のようなものが混じっていたら、真っ先に水が汚い可能性を考えましょう。

 この白い物体の正体は、尿酸。これは簡単に言えば老廃物のことで、通常は尿と一緒に液体として排出されます。しかし、カメの体内が水不足の状態に陥っていると、液状になって出てくることができず、白い固形物として排出されるのです。

 カメはとても水を汚す生き物ですが、自分自身は綺麗な水を好みます。そのため、水槽内が濁ってくると水を飲まなくなり、結果として水の中に住んでいながら脱水症になってしまうのです。そして、体内に水分が足りていないことから、白いフン(=固形状の尿酸)を排出するようになる。これが、カメが白いフンをした場合、まず水槽内の水が汚い可能性を疑うべき理由です。

 余談ですが、鳥のフンが白いのも同じ原理です。鳥類は空を飛ぶために、体重をなるべく軽く保てるような体の構造をしています。

 老廃物をわざわざ尿素に変えて“重い”液体に溶かすことなく、あえて尿酸という固形のまま排出する仕組みとなっているのもその一環。街中で見るハトやカラスの白いフンは「尿酸のかたまり」であり、体内に水分がなくとも毒素を体外に排出できるようにする生命の知恵なのです。

綺麗な水だとごくごく飲む

 さて、水替えは1週間に1度と書きましたが、これはあくまで最低限の場合です。出来ることならば、毎日水を替えてあげるに越したことはありません。特に暑さで水が悪くなりやすい夏場だけでも、水替えの頻度を高めた方が無難でしょう。

 僕が飼育しているミシシッピニオイガメは、水槽を綺麗にすると必ず口を大きく開け、まるであくびをしているような様子で水をごくごく飲みます。これを見ると、やはり水質とカメの脱水症には因果関係があると思わざるを得ません。

 確かに水替えは、カメを育てる上で最も面倒な作業です。しかし、それがカメの水分補給と排泄物の掃除を兼ねているわけですから、考えようによっては効率的とも言えるでしょう。また、綺麗な水の中を気持ち良さそうに泳ぐカメを見ていると、大変さなど苦にはなりませんよ!

③日光浴をさせる

 カメは日光浴を必要とする生き物です。理由は大きく分けて2つ。「体温を上げるため」「紫外線を浴びるため」です。

 前述の通り、カメは変温動物ですので、自ら体温を保つことができません。そのため、日光を浴びて体温を高めることで、餌を探し回ったり、食べたものを消化したりと、活発に動けるようになります。

 ただ、ミシシッピニオイガメに関して言えば、ほとんどを水中で過ごし、陸に上がることは滅多にありませんので、水温を適度に維持しておけば問題ないでしょう。

 一方、紫外線については死活問題となり得ます。カメをはじめとする爬虫類は、カルシウムを吸収する際に必要なビタミンD3を自力で作ることができません。このビタミンD3は、太陽光に含まれるUVBという紫外線を浴びることで、爬虫類の体内にて生成されます。したがって、爬虫類は太陽光を浴びなければ骨の元になるカルシウムを上手く取り込めず、成長に支障を来してしまうのです。

 同じく太陽光に含まれるUVAという紫外線には脱皮を促す効果があり、UVAとUVBの双方に皮膚病を防ぐ作用もあるため、カメの健康を維持する上では日光浴が欠かせません。

 カメが罹る病気の代表格である「クル病」の原因も、紫外線不足です。この病気になると、甲羅が柔らかくなったり、足が曲がって歩けなくなったりします。甲羅は一度歪んでしまうと治りませんので、由々しき病です。

カメには日光浴が不可欠

 このように、カメにとって大切な日光浴ですが、室内で飼育していると、日が当たる場所が限られるという方も多いことでしょう。かく言う僕の自宅も、ベランダは北向きで日当たりが悪く、窓もすりガラスなので、日光はほとんど家の中に差し込みません。

 そんな中で役立つのが、爬虫類飼育用の紫外線ライトです。このライトからは、前述したUVAとUVBの両方が照射されるため、カメの罹りやすい様々な病気を予防できます。また、カメがカルシウムを吸収して骨や甲羅を生成するのを助けることで、その健康的な成長を後押ししてくれます。

 僕は水槽に取り付けた紫外線ライトを毎日7~8時間ほど点灯させています。ただ、既に書いた通り、ミシシッピニオイガメは常に水中におり、物陰に隠れていることも多い種族です。そのため、3~5日に一回の頻度で水槽の掃除と水替えをするとき、カメを水槽以外の容器に移している時間を利用して、しっかり紫外線ライトを当てるようにしています。

 この際には念のため、爬虫類の体を温めるバスキングライトを照射して甲羅も完全に乾かしています。これによってカメに付着している細菌をある程度は死滅させ、その繁殖を防ぐことができます。

 実は「ミシシッピニオイガメは他の種類のカメと異なり、あまり日光浴は必要ない」と言う人もいます。しかし、病気の発症や細菌の繁殖を防ぐ効果があることは確かなので、意識しておいて損はないはずです。

④水槽内のレイアウトはシンプルに

 ミシシッピニオイガメを飼うと、水槽の中で遊ばせてやりたいので、ついつい色々なものを設置したくなります。気持ちはよく分かりますが、特に子ガメの段階で水槽内に必要以上のものを置くのは控えてください。なぜなら、子ガメの死因として多いのは、水槽内のものに挟まって水面まで浮上できなくなったことによる溺死だからです。

 水中に住むカメが溺死すると聞いて意外に思われるかもしれませんが、爬虫類はあくまで肺呼吸の動物なので、息継ぎが不可欠。非力な子ガメの場合、運悪く水中で何かに挟まると、自分では抜け出せなくなり、そのまま溺れてしまうことがあるのです。

 このため、僕は水槽のレイアウトを可能な限りシンプルにして、カメが何かに挟まるリスクをなくしています。また、必要に応じて物の配置を変更した際には、5~10分程度カメの動きをよく観察し、問題がなさそうであれば、そのレイアウトを極力変えないように心がけています。

水槽内のレイアウトはシンプルに

 僕がミシシッピニオイガメをお迎えした頃は、まだ生後2~3ヶ月でしたので、甲長は2.5cmしかなく、少し泳いだだけでも目に見えて疲れていました。息継ぎのため浮上するのにも体力を使いますので、しばらくは水深を浅めに設定し、立ち上がって首を伸ばせば息ができるくらいの深さにしておいた方が無難です。

 生後半年にもなれば、甲長5cm程度まで成長し、悠々と息継ぎをするようになります。また、一度の息継ぎでずっと潜っていられるほど、肺も成長します。そうした様子を踏まえて、足場を取り除いたり、浮島の大きさを変えたりしていけば良いでしょう。

 レイアウトをシンプルにしておけば、水槽を掃除する際に洗うものが減り、水替えが楽になるという副次的効果も得られます。上の画像を見ていただければ一目瞭然ですが、現在僕が水槽に入れているのは、①甲羅干し用の陸地兼隠れ家、②フィルター、③ヒーター、④水温計の4つのみです。

⑤餌をやり過ぎない

 ミシシッピニオイガメが飼育者に慣れてくると、水槽のきわまで泳いできて一生懸命ご飯をねだる通称“エサくれダンス”を踊ります。その可愛さのあまり、甘やかしてたくさんご飯を食べさせてしまう方も多いのですが、そこは心を鬼にして、適量で止めなければなりません。カメにとって、肥満は死にも直結する万病の元だからです。

 カメは肥満になると、脂肪によって内臓が圧迫され、消化器や循環器の働きに障害が起こりやすくなります。当然、その影響から様々な病気に罹る可能性が高まり、結果として命を縮めてしまうのです。

 そればかりか、手足や首が必要以上に太くなり、動きが鈍って怪我をしやすくなります。怪我をすると、そこから菌が入って感染症に罹る恐れも否めません。

 また、子ガメの時期に食事を与え過ぎると、甲羅よりも体の方が先に成長し、甲羅がいびつな形になってしまうこともあるそうです。やはり食べ過ぎは「百害あって一利なし」と言えるでしょう。

カメにとって肥満は万病の元

 では、カメに与えるべき食事の適量とはどの程度なのか。実は、この質問に対する正解はありません

 インターネットで検索すると、同じ疑問を持っている方は多く、そのたびに「数分で食べきれる量」「カメの頭1つ分の量」といった答えが散見されます。

 しかし、「数分」というのは投下された餌をカメが探している時間も含むのか、あくまでカメが餌を頬張っている時間の総計なのか、定かではありません。また、「カメの頭1つ分」にしても、人工飼料の元の大きさで換算すれば良いのか、それとも飼料が水中でふやけて膨らんだ後の大きさで考えるべきか曖昧です。

 カメによって個体差もありますし、飼育しているカメの年齢、甲長、体調などの変化に応じて「適量」は日々変わっていきます。そうなると結局は、自身が適切だと思う量の食事を与えながら、定期的な観察と体重測定を繰り返すしかありません。

 カメが肥満か否かは、後ろ足を甲羅の中にしまった際、付け根の部分がぷくっと飛び出ているかどうかで判断できます。そこで、水替えのたびにカメの「肥満度」を確認し、少し太り気味になってきたら、ダイエットをさせれば良いのです。具体的には、食事の量を徐々に減らしたり、水槽内の水量を増やして運動を促したりしつつ、引き続き観察を行いましょう。

 最低でも1週間に1度は水替えを行うわけですから、そのたびに観察をしていれば、たとえ一時的に「肥満予備軍」になろうとも、大事に至る前に危険の芽を摘めます。僕の場合、2週間に1回は体重測定を行い、増量した数値を定点観測しています。生後8ヶ月の現時点では、2週間で4~5gの増加であれば適正の範囲内のようです。

 食事は、株式会社キョーリンの「カメプロス(甲長3~8cm用)」を1日3回与えています。1回の量は、元々15本でしたが、カメが少しばかり太ってしまったので10本、7本と減らしていった結果、肥満が解消。最近は成長に合わせて、また本数を徐々に増やしながら様子を見ています。

 最近の人工飼料はどの商品も栄養価が高く、カメに必要な成分も全て配合されているので、それだけ与えていれば栄養失調になったり、栄養バランスが崩れたりすることはまずありません。

 ただ、このカメプロスはAmazonでも買えますし、ペットショップはもちろん、ホームセンターやドン・キホーテなど様々な場所で店頭に並んでいるため、手に入りやすさは抜群です。

 また、「ひかり菌」という物質がカメの腸内を綺麗にしてくれるらしく、以前食べさせていた人工飼料と比べて明らかに水槽内の汚れが減りました。それに応じて水槽から漏れていた臭いも抑えられ、かなりオススメです。

⑥長時間ハンドリングしない

 動物を手で扱うことを「ハンドリング」と言います。ミシシッピニオイガメは大人しい性格なので、手のひらに乗せて愛でるなど、ハンドリングが可能です。ただし、ここでは「爬虫類は基本的に触られることを好まない」という事実を理解しておきましょう。

 一般的に爬虫類は、「“懐く”のではなく“慣れる”」と言われています。ミシシッピニオイガメが飼育者を認識して水槽のきわまで泳いでくるのも、決して懐いているわけではなく、食事にありつけることを期待しているだけです。あるいは、爬虫類は全般的に脱走癖がありますので、「逃げられるチャンス」と思っているのかもしれません。

 こう聞くと残念に思う方もいるでしょうが、人間という自分よりも圧倒的に巨大な生物を前にして逃げずに寄ってきてくれる(=慣れてくれる)だけでも信頼関係が築けている証拠です。普段は水槽やケージの中を動き回っている様子を愛でるのみ。それが爬虫類との付き合い方だと考えてください。

慣れると自ら手に登ってきてくれる

 もちろん、せっかくミシシッピニオイガメを飼育しているのですから、ハンドリングしたい気持ちは分かります。人の手に慣らすという意味でも、水替えの際に5~10分ほど触れ合う程度であれば構いません。ただ、その際には下記の点に注意しましょう。

 まず、「カメにとって、人に触られている状態はストレスでしかない」ということを常に意識し、長時間のハンドリングは避けてください。変温動物のカメにとって人間の表面温度は熱いため、それに触れ続けることでカメの体温が過度に上がるのを防ぐ意味もあります。

 特に気を付けるべきなのは、食事の直後です。ここでストレスを与えてしまうと、その影響で消化不全を起こす可能性があるため、食後のハンドリングは控えましょう。

難しいことは何一つない

 さて、ここまでミシシッピニオイガメを飼育する上での注意点を述べてきました。どれもカメの命や健康に関わる事項ですので、念のため長々と詳細を説明しましたが、難しく考える必要は全くありません。

 水温調整はヒーター、日光浴は紫外線ライトを水槽に取り付けるだけで可能。「レイアウトを複雑にしない」「餌をやり過ぎない」「長時間のハンドリングをしない」については「しないように」気を付けることですので、そもそも手間のかかる話ではありません。水替えも、慣れてしまえば自然と日課のようになります。

 以前の記事で紹介した通り、ミシシッピニオイガメは初心者でも非常に飼いやすい動物です。表情豊かで、仕草もとても可愛いので、ペットの飼育を考えておられる方は、是非検討してみてください。