愛するレオパが神経障害になったら
小さな恐竜のような愛くるしい見た目で人気のヒョウモントカゲモドキ(レオパードゲッコー、通称レオパ)。既に一緒に暮らしている方や、お迎えを検討している方も多いかと思います。
今回は、そんなレオパが神経障害になった際に見られる兆候、症状、原因、対処法について詳しく紹介していきます。
僕の飼育しているレオパが瀕死の状態に陥りながら、その後、治療を経て回復したという実体験と、その際に動物病院の医師から直接伺ったお話に基づき、可能な限り具体的に書いていきますので、参考にしていただければ幸いです。
下記に目次も作りましたので、お急ぎの方は必要な情報の書かれた部分に飛んでご覧ください。
①神経障害を発症するまでの予兆と経過
②動物病院での診断内容と具体的処置
③治療過程で判明した神経障害の真因
④再発防止に向けた食事の改善
⑤治療終了までの通院頻度
⑥診療代の目安
参考までに、お迎え時の資料に記載されていた個体情報も載せておきますね。
うちのレオパは韓国で繁殖された女の子。輸入年月日が2021年9月10日とあるため、その1~2ヶ月前に生まれたものと推測されます。種はタンジェリンに属しており、レインウォーターアルビノの遺伝子も入っています。名前はレオなので、この先はそちらで書かせていただきます。
初めて症状が出てから2週間で危篤に
レオが初めて神経障害の症状を見せたのは2024年9月半ば頃でした。具体的には、突然狂ったようにケージ内を素早く動き回り、尻尾をゆらゆらと大きく振って威嚇したり、自分自身と戦っているかのようにグルグルと輪を描いたり…ときには腹を見せて身体を一回転させることもありました。
レオは基本的に図太くて大人しいので、そのように激しい動きをすることはほとんどありません。同じ部屋で静かに仕事をしていても、床材として敷いているソイルの音がたまに「ジャリ…ジャリ…」と聞こえる程度です。
ただ、「月に1~2回、何かの拍子に驚いた際にも似たような動きをした経験があった」「上記のような異常行動はすぐに収まった」という2点から、そのときは病院に駆け込むほどの重大事だとは思いませんでした。
もっとも、24時間ケージを観察していたわけではないので、今振り返ると、僕が別室で寝たり、家事をしたり、テレビを見たりしている間にも、レオは異常行動をとっていたのかもしれません。その結果、症状が出ている頻度を見誤っていた可能性は十分に考えられます。
脱皮不全こそ最初の警告だった
もう一つ書いておかねばならないのが、脱皮不全についてです。
レオは元々、自力で上手に脱皮できる子でした。飼い主の僕ですら、脱皮している現場を目撃したことは飼育開始から2年半で2~3度しかなく、「白みがかっていた皮膚の色が、気付けば鮮やかなオレンジに戻っている」という現象が常日頃から起こっていました。レオパは脱皮後の皮を残らず自分で食べてしまうため、ケージ内に皮の残骸すら残っていないという徹底ぶりです。
しかし、2024年7~8月頃から、レオは脱皮不全に陥りました。皮が白くなり始めて2~3日が経過しても脱皮せず、最終的にはぬるま湯で温浴させて皮膚を柔らかくしてから、こちらで皮を剥いてあげるということが続きました。
ただ、食欲はあり、排便もしていて、脱皮不全を除けば至って普段通りでしたので、そのときも「脱皮が下手になることもあるのか」と呑気に考えただけでした。今にして思えば、これこそ神経障害の最も初期の予兆だったのです。
異常行動の末、瀕死状態に
初めて神経障害のような症状が出てから2週間ほど経った2024年9月27日の深夜、レオはまた異常行動を見せたのち、ひっくり返って動かなくなってしまいました。
レオパはお腹の側にある内臓を守る本能から、仰向けになって眠ることはあり得ません。正直、この時点で亡くなってしまったと動転しましたが、冷静になって身体を通常の状態に戻し、じっと観察すると、ほんの僅かながら首の辺りに呼吸をしている動きが見られました。まさに「虫の息」とはこのことです。
事ここに至って、僕は慌てて近くの動物病院を探し、爬虫類の治療例が豊富な医院に連れて行くことに決めました。その病院は夜間治療も行っていましたが、既に対応してもらえる時刻を過ぎていたため、翌日の朝一で駆け込むことにしました。
その日は心配すぎて、レオの様子を確かめながら徹夜。基本的にはぐったりとしていましたが、そうした中でも何度か神経障害と思われる挙動を見せました。また、首を上に向けて息苦しそうに呼吸する様子も見受けられました。その際、口は開いていませんでした。
神経障害を引き起こす原因とは?
動物病院で最初に行われたのは、病気の原因を特定するためのレントゲン撮影です。本当は血液検査もできれば、より精度の高い原因究明が可能となるのですが、下記の2点から叶いませんでした。
まずは、レオが大暴れしたためです。レオは神経障害を発症するまでは、自分から手に乗りにきてくれるほど大人しい子でした。もちろん、手のひらの上で暴れたことなど一度もありません。しかし、のちに神経障害が収まるまでは、身体に少し触れられるだけでも極端に嫌がるようになっていました。
もう一つは、レオの体重が軽すぎて、血液を採取できるギリギリのラインだったためです。これはあとで書く話とも繋がってきます。
さて、肝心の診断結果ですが、「神経障害を発症しているのは間違いないものの、その原因は特定できない」とのことでした。ただし、原因としては「①先天的に疾患の遺伝子を抱えていて、それが突然出てしまった」「②汚い水や食べ物に湧いていた寄生虫が経口感染した」「③カルシウム不足によって引き起こされた」などの可能性が考えられました。
先天的な疾患の場合、残念ながら現状としては効果的な治療が存在しないようです。もっとも、その時点ではカルシウム不足の疑いが強かったため、原因を追究するためにも、まずはカルシウムとビタミン剤を注射することになりました。それが効けば、原因は「カルシウム不足」と推察できます。
「原因の原因」はビタミンD3の不足
結果的に、レオの神経障害の直接的原因はカルシウム不足である可能性が高いと判断されました。ただ、僕はレオに食事として解凍した冷凍コオロギを与える際、必ず下記リンクの「カルシウムパウダー」を振りかけています。この製品は爬虫類の飼育用品を数多く扱っているGEX社製で、カルシウムが足りていないはずはありません。
そこでよくよく話を聞くと、言わば「原因の原因」はビタミンD3の不足だったのです。ビタミンD3にはカルシウムの吸収を促進する効果があります。逆にこれが欠乏すると、いくらカルシウムを摂取しても上手く体内に吸収されず、便と一緒に流れ出ていってしまいます。したがって、「カルシウムを摂っているにもかかわらずカルシウム不足に陥る」という現象が生じるのです。
例えば、カメは日光浴をして紫外線に当たることでビタミンD3を生成し、それによってカルシウムを吸収しています。僕はミシシッピニオイガメも飼育しているので、爬虫類にとってビタミンD3が重要な栄養素であることは知っていました。
しかし、レオパは夜行性で日光浴をしません。インターネットで調べても、「ビタミンD3は絶対に必要というわけではない」と書かれています。また、行きつけのペットショップの爬虫類担当者に聞いても、「ビタミンD3入りの商品もあるが、基本的にはカルシウムパウダーのみで大丈夫」とのことでした。
もしかすると、実際にそうした場合は多いのかもしれません。ただ、あらゆる生き物に個体差があるように、「レオにはほかの子よりもビタミンD3が必要だった」ということでしょう。
過度な食事制限は命取りになる恐れも
また、食事の量と頻度にも問題がありました。
僕は当初、レオの成長のために食事を多く与えていましたが、彼女をお迎えした際に渡された資料に「適正体重60g前後」と書かれていたため、体重が75gを超えた時点で食事制限を始めました。
爬虫類が肥満になると、脂肪が内臓を圧迫して消化不良を起こす危険性があります。場合によっては食べた物が消化管の中で腐り、それが原因で病気になることもあるそうです。
ペットショップの爬虫類担当者にも相談したところ、「自分もレオパを飼育しているが、食事は2週間に1度だけ与えている」と言っていたので、僕も隔週で大きめ(体長2cm程度)の冷凍コオロギ2匹を食べさせる生活をしばらく続けていました。
その結果、レオの体重は54gまで減少しましたが、食事が少ない上に、振りかけられているのはカルシウムパウダーのみという状態が続いたことで、ビタミンD3が欠乏してしまったようです。
食事は頻度ではなく1度の量を減らす
通院を開始したのちは、医師の助言に従って、2~3日に1度、これまでと同じ体長2cm程度の冷凍コオロギ2匹を食べさせています。
また、食事のうち3回に1回は、これまでのカルシウムパウダーではなく、やはりGEX社が販売している「カルシウム+ビタミンD3」のパウダーを振りかけるように変更しました。ちなみに、ビタミンD3は与えすぎるとビタミン過剰症という中毒を引き起こすため、適切な頻度で振りかける必要があります。
意外だったのが、食事の頻度をこれまでの月2回から月10数回へと6~7倍に増やしたにもかかわらず、体重の増加は下記の表のように「1週間で1~2gずつ」と緩やかであったことです。食べた分だけ頻繁に排便するようになったため、言わば「健康的に」少しずつ太っていった印象を受けました。
現状で70gを超えたので、そろそろ再び減量をせねばならないのですが、医師曰く「体重が増えてしまった場合は、食事の頻度ではなく1回に与える量を減らした方が良い」とのことでした。特にレオパは拒食に陥る子も少なくないため、食事を与える頻度を維持することで、そうした異変にすぐ気付けるというメリットがあります。
また、資料に記載された「適正体重60g前後」にこだわり過ぎないよう助言を受けました。先ほど同様、レオパにも個体差があり、中には100g前後ながら健康体の子もいるそうです。さすがにそれは極端な事例ですが、レオの場合、肥満よりもビタミンD3不足の方が即座に深刻な健康被害を及ぼしたわけですから、そちらへの対応を優先すべきということでしょう。
冬場は頻繁な温浴もオススメ
上記のアドバイスに合わせて、医師からは温浴も勧められました。特に冬はどうしてもケージ内が冷えてしまうため、温浴によって身体を温め、新陳代謝を活性化させることが健康維持に有効だそうです。
方法としては、レオパが寝そべることができる大きさの容器に、40℃くらいのお湯を、レオパの半身(お腹)が浸かるほどの水位になるよう注ぎます。あとはレオパをその中に入れて、5分くらい温まってもらうだけです。
うちのレオは温浴をほとんどしてこなかったので、特に水に浸かった瞬間は驚いて逃げようとしますが、慣れれば気持ち良さそうにする子も多いようです。当然、温浴にも個体差があると思いますので、あまりに嫌がる子に対しては、より温度を下げるなどした方が無難でしょう。
温浴の際に便利なのが、温度設定の可能なケトルです。僕は下記リンクのティファール製品を使っているのですが、温度が40℃も含めて8段階に設定できる上、現状の温度も表示されるので、様々な場面で役に立っています。
温浴の際に気を付けるべきは、お湯がすぐに冷えてしまうことです。注いでいる量が少ないこともあり、最初は40℃に設定していても、5分間で一気に35℃くらいまで下がってしまいます。30℃以下になると、もはや「温浴」ではなくなるため、速やかにケージに戻しましょう。
もちろん水から出す際には、気化熱でレオパが体温を奪われないよう、すぐに身体をキッチンペーパーなどで拭くのを忘れないでください。
段階的に通院頻度を減らして様子を見る
さて、今回の治療における動物病院への通院ですが、具体的には2024年9月28日、10月1日、10月5日、10月8日、10月15日、10月29日、11月19日、12月20日という頻度でした。
ご覧の通り、最初の4回は週2回の頻度で通い、病状が安定してきてからは週1回、隔週、3週間に1回、1ヶ月に1回と、徐々に間隔を空けての通院となりました。治療内容は基本的に触診およびカルシウムとビタミン剤の注射です。
このように段階的に通院の間隔を空けていった理由は、カルシウムとビタミン剤の注射による効果が切れても、食事からの栄養摂取で神経障害の発症を抑えられるか、少しずつ様子を見るためだそうです。「1週間空けて大丈夫なら2週間。それで問題がなければ3週間」という具合ですね。
12月20日にも、医師から「経過は良好」との診断を受けました。次は6週間後に通院し、それでも大丈夫であれば、さらにその8週間後に病院に行く予定となっています。
診療代は1回あたり5000円弱
ちなみに動物病院での費用ですが、初診料1500円、診察料800円、レントゲン6000円、カルシウム注射2500円、ビタミン剤注射1000円でした。
したがって、初めて病院に駆け込んだ日は初診料、レントゲン、カルシウムとビタミン剤の注射で1万1000円+消費税がかかりましたが、その後は診察料、カルシウムとビタミン剤の注射で4300円+消費税となりました。
愛するペットの一大事ですから、当然お金には代えられませんが、参考までに書いておきます。
僅かな変化が重大疾患の兆候かも
今回の件で、ペットを飼う際には僅かな変化も見逃さないことが重要だと改めて痛感しました。その変化こそ重大な病気の初期症状かもしれないからです。
生き物ですから、どんなに気を付けて育てていても病気になることはあるでしょう。今後は少しでもおかしいと感じたら、可能な限り早く動物病院に連れて行こうと思います。たとえそれが杞憂に終わったとしても、重大事であったときのリスクを考えれば何でもありません。
また、そうした万が一のときのために、自身の飼育している子を診てもらえる動物病院をリストアップしておくことが大切です。特に爬虫類の場合、犬や猫と違って診てもらえる病院が限られるため、あらかじめ調べておいた方が良いでしょう。
神経障害は必ずしも不治の病ではない
飼育しているレオパが神経障害を発症した方のブログを覗くと、残念ながら亡くなってしまったという記事が目立ちます。レオを診てくださった先生も、初診の際にはかなり厳しい表情をしておられましたし、レオがそれなりに元気を取り戻してからも、6回目の通院までは「まだ予断を許さない」とはっきり言われました。安易に「大丈夫」と断言できないほど、容体が急変するケースが実際によく見られるのでしょう。
しかし、たとえ神経障害を患っても、カルシウムやビタミンD3の不足が原因であれば回復することがあるのだと、僕は身をもって知りました。今回のような事例もありますので、ご自身のレオパが神経障害を発症してしまったとしても、どうか希望を捨てないでください。
定期的に上げているミシシッピニオイガメの成長記録と異なり、レオパの飼育方法を説明した記事はいくらでも転がっていますので、僕はこれまでレオパに関する記事をあえて書きませんでした。ですが、今回は上記のような思いから筆をとりました。この記事が、同じ境遇にあるレオパの飼育者様のお役に立てば幸いです。